私が世界一の仕事を辞めた理由 | Why I left the best job in the world

ゴールドマンサックスからAndreessen Horowitz(世界で最も有名なベンチャー・キャピタルファームの1つ)に転職し、誰もが羨むキャリアを歩んできたPreethi Kasireddyは、ある日まさかの決断をします。
medium上でご本人の許可を得て翻訳させていただきました。
 
Original post by Preethi Kasireddy
Why I left the best job in the world

 
===========ここから翻訳===========
 
 
今日はAndreessen Horowitzでの最終出社日でした。

テクノロジー界隈で最も頭が良い何人かー 例えばMarc Andreessen、Ben Horowitz、Chris Dixonなどと働けた事を、そしてa16z(Andreessen Horowitzの略称)「起業家が彼らの夢に到達できる事を助ける」というのミッションに携わらせてもらう中でたくさんの事を学べた事を本当に幸運だと思っています。

それなのになぜ辞めるのでしょうか?その理由はもしかしたらあなたを驚かせるかもしれません:
 
実は、ソフトウェア・エンジニアになる事にしたんです。
 

私のようなバックグラウンドの人にとってこの選択は普通の選択ではないですね。もしかしたらこの記事を読んでいる人は私の事をクレイジーだと思うかもしれない、もしかしたらちょっとバカなんじゃないかとすら思うかもしれない。でもあなたが私について結論を出す前に、なんでこんな大きな変化をしようと思ったか、なぜ金融の仕事からエンジニアリングの世界に飛び込もうとするに至ったかの内なる思考の旅を共有させて欲しいのです。
 
物語は私と同じポジションの人が「わかりやすい」選択をしたとして、私がなぜ彼らと同じ選択をしたくないのか説明するところからスタートします。
 

ビジネススクールに入るのはどうか?

たくさんのHBS(Harvard Business School)やGSB(Stanford Graduate School of Business)の卒業生たちと話した後の私の結論はビジネススクールは経験して学ぶ場ではなく強固なプロフェッショナルネットワークを作る場所であるということでした。私の場合はAndreessen Horowitzという最高のネットワークの1つが近くにあったため、ビジネススクールは不要でした。

もしネットワークを持っていなかったとしても、私にとってのビジネススクールの最大の問題はそれ自体がコンサルティングや金融のセクターに向いてしまっているということです。私はコンサルティング業界には行きたくないということは自分でわかっていたし、2000万円をかけて2年もの人生を費やしてコンサルティングや金融業界の勉強をしてネットワークを作ったとして、それがリアルな世界の素晴らしい体験付きの仕事をオファーしてくれるんだろうか?

a16zの投資先のスタートアップで働くのはどうか?

この質問は説明が少し難しい。a16zにいる間も幾つかものすごくおもしろそうな仕事のオファーをもらっていました。グロース責任者とか、ビジネスディベロップメントの責任者とか。でもそう言った話は断ってきた。それらはエキサイティングなポジションだと思うけれども、もっとテックなものに憧れを抱いていたんです。

というのも、私が大学卒業後金融に巻き込まれてしまったのはゴールドマンサックスに入る機会をもらったからなんです。実は私の大学での単位はインダストリアル&システムエンジニアリングだったにもかかわらず、です。

投資銀行で1ヶ月働いて、私はこのキャリアパスを長い期間やりたくはないな、とすぐに理解しました。魅力的ではあるけれど、大学で学んでいたエンジニアリングほどは私の心をつかみませんでした。にもかかわらず、金融は私を簡単にはそちらの道には戻しませんでした。a16zでのポジションの機会をもらい、私はそれは金融から離れることを失敗していると知っていました。

幸運にも、これらすべてのことが今の私に繋がっています。金融の世界での最高の経験をa16zでさせてもらって、エンジニアリングの世界に戻る準備ができたのです。

大学院はどうか?

大学院に行くことはかなり真剣に考えました。コンピューターサイエンスやデータサイエンスや機械学習についてたくさんのコースがあり学ぶことができるスタンフォード、UCバークレイ、そしてMITについては特にです。

スターンフォード、UCバークレー、MITなどの授業プログラムをたくさんリサーチしてました。結局、たくさんの期間GRE(共通試験)のために時間を費やして入学願書を書いて2〜4年かけて単位を取る必要はないという結論に達しました。私はその時間をホットなテックやリアル世界での経験に使いたいと考えたんです。単に私が大学院での単位が新しいフィールドに入るために必ずしも必要ではないと思っているからです。
 

ソフトウェアエンジニアの入り口

さて、あなたは今私がなぜ大学時代の専攻であるインダストリアル&システムエンジニアリングの道に行かずに全く新しい道であるコンピューターサイエンスの道に行こうとしているのか疑問に思っているかもしれません。正直に言うと、コンピューターサイエンスをいち早く学んでおくべきだということを大学にいた時に知っていたらどんなに良かったか!

私がそうでなかった理由は、私が若い頃はソフトウェアエンジニアというものが全く奇妙なものだと思っていたからなんです。オタクばかりの薄暗いブラック企業で、家に帰って実家の地下室で長い1日をスクリーンに向かってコードを書いてるイメージしかなかったんです。ソフトウェアエンジニアをクリエイティブでパッションのある人たちだと見れなかった。単純に言うと、私の興味がそこになかったんです。

もし私のお母さんが他のインド人の両親同様、医者になってくれることが夢であって、ソフトウェアエンジニアになることに反対だったってこともあるかもしれない。

大学に行って実際のコンピューターサイエンスの生徒たちに会って、ソフトウェアエンジニアについての評価を180度変えました。コンピューターサイエンスの授業に潜ってC++の授業を幾つかとってみて、それがものすごく楽しいと感じていることに驚きました。でも、初年度で専攻を変えて真正面から取り組むということに関してナーバスになりすぎていたし、自分を「安易な道」として納得させる程度にはインダストリアル&システムエンジニアリングも楽しかったのでそうはしませんでした。

シリコンバレーが私の背中を押した

サマリーとしては、私は子供のころからコンピューターで遊んでいたようなプログラマーの一人ではありません。コンピューターサイエンスの運命にある子とは、私の場合は少し違ったのです。

私の場合は大学卒業後、世界のテック首都であるシリコンバレーに移動するしてビジネス界で最高のエンジニアの何人かに囲まれるところからスタートしました。彼らが取り組んだもの、解決した問題について学び始めて、圧倒されました。”機械学習”、”コンピュータビジョン”、”AI”、”ロボット工学”、”KR(Knowledge Representation)”のようなコンピューターサイエンスのトピックに魅了され始め、読めるものは全て読み漁りました。ソフトウェアエンジニア、データサイエンティスト、機械学習リサーチャーに会って彼らが何を考えているのか、何を日々行っているのかを垣間見ることで自分が学んだのは、全てがエキサイティングだと分かり、その過程で彼らに対して計り知れない尊敬と感嘆を抱いたのです。

私が彼らの一部になりたいと思うのにそう長くはかかりませんでした。

最初の試行錯誤

どうやってコンピューターはコードをコンパイルするのか?一体全体どうやってプログラミング言語は作られたのか?どうやったら”良い”システムと”悪い”システムを判別するような機械学習アルゴリズムを作ることができるのか?どうやって凄いデジタル製品ができるのか?このようなたくさんの疑問とともに、私はコンピューターサイエンスの旅に出ました。これらの質問をこなすために、コードを書くことを学ぶ必要が出てきました。私はコードを書き始めました。

私は自分が始めてコードを学び始めた時のことをはっきりと覚えています。それは2013年の冬のことで両親と兄弟と一緒に家でクリスマスを過ごしていました。私の最初のステップは”どのプログラミング言語を学ぶべきか”を1日中リサーチすることでした。たくさんんフォーラムやブログ記事を読みあさった後、Pythonに落ち着きました。Zed Shaw著の“Learn Python the Hard Way(Pythonをハードに学ぶ)”を買って実践を始めました。悲しいことに、そのチャレンジは2週間ばかりで終わりました。大変で、不快で、フラストレーションが溜まって早すぎるギブアップをしてしまったのです。

”こんなもん誰が好きこのんでやるの?” と独り言のように思いました。

ちょうど1年後、私のコードを書きたい気持ちは再び戻ってきました。もう一回トライしようと自分に言い聞かせ、今回はその決心は前回の2倍、つまり1ヶ月持ちました。残念ながら私はその頃生活可能な程度のワークライフバランスのとれる仕事を探して奮闘し始めていました。コーディングはダンスやヨガみたいな新しい趣味を持つのと違って、もっとカジュアルに始めることができます。コードを書くときに、「今からコードを書くから仕事のことは考えないようにして集中する」なんて人はほとんどいない
と思うけど、私はその時まだコードを書くのが楽しくなる核心の基本の部分にすらたどり着いていなかったので一旦コーディングを横に置きました。

”あとでもっと仕事が落ち着いた時にやろう” と独り言のように思いました。

自分を疑う

私は自分のゴールに向かって奮闘してなかっただけだった ー 私は失敗しかけていました。私が優れていると確信できる唯一のことは自己嫌悪しかない、というネガティブさに押されてコーディングは後回しにされていました。そう、自己嫌悪です。自分を恥じていました。1800万人がコードが書ける(IDCによると。)のに、私ができないのはなんで?なんで私はできないの?いつもみんな私のことをスマートだって言ってくれるけれど、それが間違っていると確信していました。

私は世界中のプログラマを妬み始めており、コードを書ける人にジェラシーを感じていました。私はボーイフレンドにすら「一緒にアイデアを考えたアプリを私がコードして彼をどんなに助けたいか」と泣いて伝えました。これはコードを勉強したいという欲求に耐えられなくなるまで続きました。

“Hello world(コンニチワ世界)”

最終的に、感情的な分岐点に差し掛かり、私が以前敗れた最初のハードルを越えるところまでやってきました。もう午前5時でトレッドミルを1時間走りながらコーディングのジレンマを頭の中で考えていました。突然、コーディングができないという感覚は自分をみすぼらしくしているだけで、罪の意識を感じているだけでは何も変わらないという神の啓示を受けたのです。コーディングするか、コーディングすることを諦めるかどちらかだったのです。

私はその日仕事に行かずに家にいることにして、本を開きました。今回はやる気が持続し、1週間休み無しでCodeSchoolやTreeHouseでチュートリアルやオンラインのコースを終えると、HTMLとCSSで始めてのWEBサイトを作れました。

次にJavaScriptの基礎を勉強しながら、この2週間で学んだことのすべてを結集して作るサイドプロジェクトをスタートしました。その1週間後には私の最初のフロントエンドコーディングプロジェクトを終えました。(今回は辞めたのではなく、完成させました。)

今思えば、そのプロダクトは雑でメンテナンス・アップデートしにくいしスパゲッテイー・コードじゃ恥ずかしいと思えます。今ならもっとモジュール化できるとわかるし、メンテナンス性も構造も改良してゼロから作り直せると思います。(週末プロジェクトの1つとして書き直す予定です。)

そして、そのプロジェクトが大好きでした。

サイドプロジェクトのやる気にドライブされ、夜遅くまで予期しなかったチャレンジをこなしながらコードを書いてもなお、それを”訓練”とは全く感じませんでした。私は全ての時間ープロジェクトを細分化する作業も、プロジェクトデザインの時間も、どんなツールやライブラリを使うのか考える時間もーそして最高だったは、私がやりたいことを実現するコードを模索しようとすると脳が痛んだことでした。それまで全ての時間、私は間違い続けてたことがわかりましたー私はプログラミングを学ばなければいけない何かであり、持つべきスキルセットであると考えて学ぶことがタスクのように感じていたのです。でもこのプロジェクトを通して、プログラミングというものがコードする方法を知るだけでなく、自分が気にしていて世の中に見てもらいたい何かを創ることであると理解するのを助けてくれました。プログラミングは人を自由にし、人に力を与えます。そして創造力を与えます。火花が散り、私は夢見心地でした。

夜も週末も学び続け、すぐに考えることはコードのことだけになりました。それ以外のことは気を散らすものでしかなかった。コーディングの問題にとらわれ前夜のスタックしたコードについて日中ググる日々でした。仕事から急いで帰って数時間またコーディングです。この生活は自分自身にこう問い掛けるまで続きました。

“これを一日中ずっとやったらどう?”

そして、今の私

こんなわけで、二重生活をやめてコーディングに全ての時間をコミットしようと決めましたが、それは私の決断の中で一番難しいものでした。Andreessen Horowitzに居られることは物凄いことでしたし、プログラマとしてだいぶ遅れているとわかっていました。

言うまでもなく、私の母は大反対しています。彼女は私がこんな素晴らしい仕事を辞めて貯金をはたいてそんな小さな経験したことに捧げるなんて完全にイカれてしまったと思っています。もっと業界経験のある人たちですら、GoogleやFacebookで働くならコンピューターサイエンスの学位がないと相当厳しい、と言っています。

もちろん、私はスタンフォードやMITのコンピューターサイエンスの学位はありません。もちろん、Googleやfaceboookの仕事も得られないでしょう。でもfaceboookやGoogleに入れるかどうかなんて私がなぜやりたいかと比べたらどうでもいいのです。私のゴールは純粋に学ぶことです。私の頭の中のロードマップはこうです:

1.私が最も開発したいものを探すこと:フロントエンドなのかバックエンドなのか、モバイルアプリなのかWEBなのか、どのアプリケーション領域が最も興味深いのか:機械学習か、AIか、ロボット工学か、コンピュータビジョンか、などなど。

2.私が最も開発したいものをすごくうまく出来るようになる

3.これらのスキルを使って世界を変える。それは世界を変えるような会社を作ることかもしれないし、全然違うものになるかもしれない。

そう、私はスタンフォードのコンピューターサイエンス学位は持っていないかもしれないけど、人間の限界まで努力して現実世界の現実世界のプロダクトを作る経験を通してその学位と同じだけのものを満たすことができると思っています。もちろんリクルーターや採用マネージャーの人は私のことをコンピューターサイエンス学位がない人だと軽視していることは理解しているけど、そんなのOKです。誰か1人だけでも私のことを信じてくれて私の力を証明させてくれるということにおいては自信を持っているから。幸運にも、それがテック界隈であなたが必要なたった一つのことですよね。私は底辺からスタートして自分を上げていくことを喜んでやりたいと思っています、ちょうど金融の世界でそうやってきたように。

次のステップとして、Hack Reactorというサンフランシスコの12週のコーデイングキャンプに参加する予定です。このキャンプで私がコードを学んで強固な基礎を築き上げるのに役立つでしょう。そして自分の血肉となって幾つかのプロジェクトの機会を得ることが出来ると思います。ここから開発者としての仕事を得るために動こうと思っています。

これが厳しい戦いになることはわかっています。私にとっての”コーディングを学んでるんだ〜”というハネムーン期間は終わりました。これからアルゴリズムやデータ構造などのコンピューターサイエンスのディープな世界に入り、どんどんハードな世界になっていきます。新しいことを学ぶたびに壁にぶつかるのは不快でフラストレーションが溜まり、たまに完全に迷ってしまうこともあります。壁を打ち破るのには数時間かかる時もあるし、数日かかる時もあるし、数週間かかる時もあります。自信をなくし自分の適性に疑問を持つ時もあります。下のチャートを見れば、”内なる否定(inner contradictions)”の始まりフェーズにいることがわかります。

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Source: http://www.eoslifework.co.uk/transprac.htm

でも今回は、そんな全ての感覚が大好きです。なぜならそれは私が成長し、学び、強くなっているということだから。粘り強さは持っているので、それらの感覚をコントロールできるでしょう。自分の表皮を鍛えて、もっとたくさんの困難を楽しむでしょう。私が壁を押し続ける限り、道は開かれるでしょう。
とにかく、これはロケットサイエンス(高度な知識が必要であるもの)ではないです、たまにそう感じることもあるけれど。

待ち遠しい!

私がやっていてもっともクレイジーだと思っていることは、私がやっていることが、最終的に私がソフトウェアエンジニアリングを長い道のりの後に好きでなくなる可能性もあるーもしくは自分が望むような高いレベルのスキルに達しないーもしくはもっと悪い、好きでもなくスキルもないエンジニアに成り下がる可能性すらあるーということを理解しながらやっているということです。しかし正直に言うと、こういった悪く見える結果になったとしても”失敗”になるとすら考えていません。私の頭の中では、人生のもう一つのチャンス、世界を変えることに1歩だけ近いチャンスを手に取っていることでしかないのです。

ということで、世界を変えるもう一つのチャンスをとることにし、その先に行こうとしています。私が世界最高のソフトウェアエンジニアになれるかどうかは約束できないけど、文字通り山ほど学んで今の私よりベターな私になることは約束できます。そして私が”失敗”はしないことを約束します。そんなことにはしません。

さあ、次はあなたのターンです。あなたが後回しにして気に病んでいるものを見つけて、第一歩を踏み出しましょう。

===========翻訳ここまで===========

謝辞

Preethi, Thanks so much for allowing me to translate your experience into Japanese. I hope readers will follow your way.

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