日本で投資活動を本格化させた500 Startups Japan。パートナーの澤山さんとジェームズさんに「日本での投資戦略」「500 Startupsから投資を受けるメリット」「投資判断の視点」を聞いてきました。


日本で投資活動を本格化させた500 Startups Japan。パートナーの澤山さんとジェームズさんに「日本での投資戦略」「500 Startupsから投資を受けるメリット」「投資判断の視点」を聞いてきました。

500 Startups Japanインタビュー前編

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500 Startups Japan パートナーの澤山陽平さん(左)とJames Rineyさん(右)

ー500 Startups自体はアメリカと世界で非常に実績があるアクセレーターですよね。今回日本でもジェームズさんと澤山さんが立ち上げを発表してちょうど1年という所で、既にもう記事を拝見するとスペイシーさんとか、ポケットコンシェルジュさんなど色々投資されています。外部の記事のインタビューでは、ファンドの規模は3000万ドルの募集とのことでしたが、年間の投資予定数やそれぞれの投資の規模感も教えていただけますか?

年間15社〜20社のスタートアップに投資する

jamesJames:15社から20社くらいのスタートアップに年間で投資しようと考えています。もちろん例外はありますが、大体でいうと一回の投資は大体1000万円から5000万円、追加投資の場合は、5000万円から1億円くらいのレンジになります。また、追加投資は必ず行うものではなく、本当に良いスタートアップで資金需要があるところに関しては追加投資します、というスタンスです。

ー今回の$30M(これまでに揃えるのであれば、3000万米ドル?円?)のファンドからトータルで50〜60件くらいの出資をしていくイメージになるんでしょうか?

jamesJames:実際どうなるかはまだわかりませんが、現時点ではそのようなイメージで考えています。実際今回のファンドがファーストクローズして、投資を開始したのが2月の半ばなので、そこから現在までで5ヶ月ちょっとが過ぎました。実際投資済みの案件が今6件、投資に進みそうな確度の高い案件も加えるとが10件あるので、まあ大体1ヵ月に1,2件のペース、振り返って予想通りか、少し早いペースだなという印象です。

ーこの短期間にそんなに投資できるスタートアップを見つけられるというのは、問い合わせがたくさん来ているということでしょうか?

sawayama澤山:そうですね、問い合わせの数は思っていた以上です。僕もジェームズも長くこの業界で色んなスタートアップに携わってきましたが、500 Startups Japanを始めて以来、それとは比較にならないくらい、ひたすらミーティングをしてような状況です

基本は500 Startupsのコンバーチブル・エクイティフォーマット「J-KISS」での投資だが、他のVCやエンジェルとの共同出資も行っていく

ー素晴らしいですね。現在含め今後行われていく投資は、基本的には先日公開されたJ-KISS(500 Startupsが出している、コンバーチブル・エクイティの投資フォーマット「KISS」を、日本の法令や税務に最適化したもの。コンバーチブル・エクイティはアメリカにおける初期段階の投資手法として、現在メジャーになっている。)で全て行っていく予定ですか?

sawayama澤山:日本の業界を良くしていく為に僕らが提案しているという意味合いもあるので、僕らが単体で投資を行っていく場合は、出来るだけJ-KISSを使っていく予定です。ただ出来るだけ使っていきたいとは思ってますが、僕たちとしては一緒に色んな人と投資するのも全然大歓迎なんです。他のVCとは違う所で価値を提供出来るので、共同で出資する際には僕たちが入ってくれると嬉しいという声もいただくこともあります。そういった時には当然、J-KISSを必ずしも使わなくてもOKですよ、ということにしています。

ーラウンドでリード投資家の方が決めた物に合わせるということですね。

sawayama澤山:はい。あとはそれから僕らが関わっていない所でも、実は結構J-KISSって使われ始めています。今まではエンジェル投資家から資金を集める時に契約とかも締結せずに投資を実行してしまっていたために、後で揉めたりするケースがありました。J-KISSは投資契約としてもフォーマット化されているので、喜ばれているようです。

超グローバルと超ローカルの両方に投資していく

ー500 Startupsというと世界的なユニコーンを探して投資するイメージですが、世界展開を前提においたスタートアップへの投資を行っていくのでしょうか?

jamesJames:もちろん世界展開を狙っていける会社は、僕らもネットワークとかを上手く使っていける可能性が高いので投資をします。ただ、グローバルに進出するビジネスじゃないと我々からの投資を受けれないんじゃないか、というのは僕たちに対してよくある誤解です。僕たちは超ローカルと超グローバル、この両方に投資していきます。

超ローカルの所は参入障壁が高いので、海外のプレイヤーが入ってきてもそこまでリスクは高くない。しかも、色んな国で色んなモデルが試されているので、僕たちはそういった所の失敗や成功のノウハウだったりとか、どういう経緯があったかっていうことを知ってるので、これを伝えていくことで日本の超ローカルスタートアップに対してもサポートが出来ます。

例えば、500 Startupsで最近投資したスペイシーという会議室のシェアリングのスタートアップがあります。基本的にはまず日本でどんどん拡大していくんですけど、500 StartupsがUS北米版の会議室シェアリングのスタートアップに投資していて、バリュエーションはすでに100億円を超えてる成功企業です。そういった会社のノウハウを、スペイシーのような超ローカルスタートアップに伝えていくっていう事も出来るのです。

ーそれは日本のスタートアップにとって、すごくありがたいですよね。。先ほど、他の投資家さんと違う価値が出せるという話がありましたが、先ほどの例の他に、どういったものが500 Startupsの価値が出せるポイントになるでしょうか?

500 Startupsが日本のスタートアップに出していく3つの価値

jamesJames:まず前提として、日本にいるVCの中で僕らが唯一シリコンバレーから来ているVCだということです。シリコンバレーとの繋がりをアピールする人はたくさんいると思うんですけど、500 Startupsほど本当に奥の奥まで繋がってるというか、本当にそこから出てきたVCは僕らだけだと思います。この強みを活かして何が出来るかというのが、3つあります。

1つ目はグローバル・ビジビリティー。日本のベンチャーってブラックボックスになってしまっているので、世界から全然見えない状態になっています。日本のベンチャーの情報も日本語でしか提供されていないので、海外からすると情報がほとんど手に入らず、日本でどんな事が起きてるのか分かりません。
こういった状況だと、日本のベンチャー企業がどんどん大きくなってきて、どんどん成長していますが、海外のVCが投資したり、海外の大企業が提携したり、買収したり。こういったことは、現状やりたくても、出来ないという状況になってしまっています。

でもある日本のスタートアップに500 Startupsが投資したというだけで、世界の目がここに集まるし、さらに投資したということを僕たちも積極的に発信すれば、それは一気に広まります。実際東南アジアで全く同じような事が2年前位に起きています。500 Startupsが東南アジアのスタートアップたちに投資を始めてから、一気に世界中の人たちが東南アジアに目を向け始めて、東南アジアの投資件数は大幅に増えました。それと同じような事が日本でも出来るんじゃないか、という事が1つ目ですね。

sawayama澤山:僕らは、日本のスタートアップは全然アメリカに負けてないと信じていて、実際結構向こうのイベントとか行くと、それを実感できるんですが、世界から日本のスタートアップがもっと見れるようになれば、海外の企業との提携だったり海外VCからの調達が活発になるはずです。

もう1つ、分かりやすいのが500 Startupsのノウハウです。500 Startupsがやってるようなマーケティングのノウハウを叩き込むとか、プロダクトをどう磨き込むか、グロースハッキングどうするんだ、とか。あともちろんプレゼンテーションもです。プレゼンテーションはまだまだ日本とアメリカで、レベルの差があると思っていますので、きっちりと叩き込んでいく。資金調達のノウハウもそうです。J-KISSはこのノウハウの一例ですね。

jamesJames:3つ目が、ネットワークだと思っています。500 Startupsについて紹介する時にいつも「世界で最もアクティブなシードVCです」って言ってるんですが、どうアクティブなのかっていうと、今まで既に1500社以上に投資してきているんですね。この数も圧倒的だと思うんですけど、大体1社あたり2人位の共同創業者がいると考えると、単純計算でも1500社で3000人起業家の先輩がいる訳です。加えて、各分野の専門家メンターが300人位います。日本も今メンターだったりとか、エンジェル投資家とか、メンタリングできる人が少しずつ出来てるんですけど、また違ったものをこの専門家メンターの所に全てアクセス出来るようにしていくことで提供出来るのではないかと思っています。

日本の場合、それこそユニコーンを作った人って、そこにかかった従業員だってそんなに多くないんですけど、500 Startupsのネットワークにはそういう人がごろごろいる状況です。

ー特に日本でもメンターの方々がいらっしゃって、海外にもいますっていう所なんですけど。基本的には投資先のスタートアップに対して実際にはどんな感じでメンタリングをされてるんですか?

sawayama澤山:日本は今まさに立ち上げ準備中です。例えばイベントとして、J-KISSを作ってくれた森・濱田松本法律事務所の増島先生に、J-KISSの勉強会を20〜30人の起業家を前にやって頂いたりしました。あとはどちらかというと、投資先のスタートアップが困った時にその問題を解決出来そうなメンターの方に繋ぐといったことを中心に行っています。グローバルなメンターだと、ざっくりな感じで「じゃあこの人にメールで繋いどくよ」、とか「電話で聞けるようにしとくよ」、といった感じが多いです。
日本のメンターもそういう意味で言うと、色んな各分野の専門家にしています。増島先生はもちろん投資契約の専門家だし、例えばグーグルにシャフトというロボットベンチャーを売却した加藤さんはグローバルに投資していく技術ベンチャーの立ち上げとかだったりについて語ってくれるだろうし、後は岡島さんという組織つくりのプロとして有名な方もいらっしゃいますす。。こういったメンターの方々に繋いでいくのが、基本的にやっていく事ですね。もちろんメンターの方も忙しい方々なので、ピンポイントにサポートして頂くのが一番動いていただきやすいです。

500 Startupsはトレンドにまだなっていない次のトレンドを作っていく「優秀な起業家チーム」に投資していく

ーなるほど、「グローバル・ビジビリティー」「グルーバルなノウハウ」「多様なメンター」というのはいずれもスタートアップにとってメリットが大きいですね。さて、500 Startups Japanの投資対象を見る時に、こういうスタートアップに来て欲しいなっていうポイントってありますか?

sawayama澤山:セクターは全く決めていません。何故かというとシード投資では「まだトレンドになっていない、全然当たり前じゃない段階」に投資しなければいけない。例えばデイブ(500 Startupsのファウンダー、Dave McCluer)が、Uberのシード段階に投資する機会があったのに投資を見送ったことがありました。彼はもちろんそれを後悔していて、それを教訓にしているんですが、その時シェアリングエコノミーはまだバズワードじゃなかった。その時はトレンドになるとわからなかったわけですが、シードではトレンドに投資するんじゃなくてトレンドを作っていく会社を見つけなきゃいけない。そうするとまず優秀な起業家と会って、アイデアを聞いた方がいいですよね、単純な話だけど。その時にタイミングがいいかどうか、なぜ今なのか。

あと、唯一僕らがそこに関しては譲らないのは、チームですね。例えば、いいサービスがあって、でも一人でやってますという会社よりは、チームがすごくいいバランスが取れていてプロダクトはプロトタイプですという方が投資をすると思います。

ーアイデアの検証は、どのレベルまで進んでいる必要があるんでしょうか?例えばチームがすごくいいです、アイデアもすごくいいです、だけどまだ検証できてない。ニーズの検証やプロダクトマーケットフィット検証が出来てない、その時に投資するかどうかっていうことなんですが。

jamesJames:プロダクトマーケットフィット出来てる必要はない、けれど顧客の話をちゃんと聞けてるかはすごく大事です。プロダクトマーケットフィットしてたらそれはもうシリーズAフェーズなわけなんですけれど、僕たちが投資する場合はプロダクトによります。イーロン・マスクのみたいな会社だったら、プロダクトマーケットフィットが分からなくても、投資するしかないですが、ネットのサービスであればトラクションの話はもうちょっと大事になるかもしれません。

sawayama澤山:あとはBtoBとBtoCでも全然違いますよね。BtoBでしかも業界の課題を解決する系のサービスであれば、課題も顧客もちゃんと見えてて、それに対するソリューションとしてこう言ったサービスが一つ有り得ますよねという説明は投資家から見て大分「成功確度が高い」ものに見えます。それでチームが良ければ投資したいです。

一方、BtoCだとプロダクトを出してみないとちょっと分からないよね、というところは間違い無くあるので、「これから消えるメッセージが来ますよ」とか言われても、「うーん、よく分からないな」みたいな感じにはなっちゃうと思うんですよね笑

とはいえトラクションを確実に求めるという事はないです。トラクションはもちろんあればベターであるのは間違いないですが、全然トラクション実績が出る前の状態でも僕らは投資していきたいと思っています。

500 Startups Japan
http://500Startups.jp/

予告:
500 Startups Japanインタビュー後編は、J-KISSについてまとめます!

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