Pinterestの共同創業者であるベン・シルバーマン(Ben Silbermann)がYcombinatorのStartup Schoolで語った起業家へのアドバイス

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2012年にPinterestの共同創業者であるベン・シルバーマン(Ben Silbermann)がStartup Schoolで語ったビデオ。Pinterestの創業者たちがいかに厳しい時代を過ごしたのか、投資家にどんな風にあしらわれたのか、など笑いをとりながら自分とPinterestが経験した事を話しています。
 
僕は初めて見たときからこの動画が大好きになり、それから1週間ほど毎日のように聞いた。朝出勤する時も、昼作業する時も、夜寝る前も、ジムで走っている時も。でもそれでは足りず、英語で何となく聞き流している部分も全て理解するために翻訳してみることにしました。が、長くてたまに単語が聞き取れずかなりの部分雰囲気で訳しているのでけっこう間違っている部分があるのは許して頂ければ幸いです。
 
長いので先にヘッドラインを。

  • ローンチ3.5ヶ月目のメール
  • 価値のあるものを作るには時間がけっこうかかる
  • 動き出す前〜グーグルでCS
  • まずコミットしよう〜当時の彼女に突っ込まれて
  • 資金調達を体験して学んだ事
  • たった1点でいいから秀でたものを作る
  • たった1人、これが欲しい!と思う人(自分)がいるならば
  • みんな同じ記事読んで同じこと考えてる!
  • まとめ
  •  
    個人的には中に出てくる「Pin It Forward」のキャンペーンとか結講実戦で使えそうだなーと思いました。
     
    それでは以下、全翻訳です。(ヘッドラインは僕がつけてます。)


     

     

    はじめに 〜 ローンチ3.5ヶ月目のメール

    まずはじめに、クールなものを作りたいと思っている人がこんなにたくさんいる、こんな場に招待頂いて、とても興奮してます!僕は昨夜、今日話す準備をほぼ完了し昔のEメールをあさってました、記憶がはっきりしなかったので。2010年3月あたりのところでPinterestをローンチした3.5ヶ月くらい後のメールを発見しました。そのメールはその当時のアドバイザーや投資家へのメールで、その頃僕はコーブ・ラボ(その当時の会社名)がうまくいってなくてとても疲れていました。Eメールにはこう書いてあります。
     
    「皆さん、こんにちは!コーブラブからの速報です。僕たちのWEBサイトPinterstのレビューをしています。Piterestは写真を人々が自分の大好きなものを共有したり発見したりするためのツールです。人々はPinterestに参加して自分のピンボードに写真をコレクションし、友達のピンボードをフォロー見に行くことが出来ます。いい進捗を報告できて嬉しいです!プログレスは3000登録ユーザーで、デイリーのピンはどんどん増えてます!また業務的な改善もお伝えします。数ブロック先の新オフィスに移動しました。YCombinatorのスタートアップであるショーリオとオフィスシェアすることでオフィス料金を下げることができました。アマゾンの無料クレジットも手に入れました。」(会場、笑)
     
    普通に考えてこのメールにはいくつか変な点があるね。まず第一に新しいオフィスの場所はカリフォルニア通りにある二つのベッドルームがある荒れ果てたアパートだったということ。実際私は引っ越しの最中、リビングストンの方角に「えー、マジかよ。あの場所はXXだと思った。」と言ったくらい。(会場、笑)二つ目はその場所の配置だった。2つのベッドルームがありましたが、1つの部屋は私の共同創業者でるポールが住んでいてもう一つの部屋にはショーリオの共同者であるデイブが住んでいたんだ。
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    これはデイブの写真。2つの会社のメンバーはみんなリビングルームで終日仕事をしていた。デイブは夜型人間で、ハッカーの中のハッカーで午前4時まで起きてた。だから僕たちが投資家やユーザーとミーティングをしているとデイブがシャワーのためのタオルを取りにきて、みんなに見られていた。すごいひどい状況だったね。(会場、笑)
     

    価値のあるものを作るには時間がけっこうかかる

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    ちょっとあとに映画のザ・ソーシャルネットワークを見にいって、誰も映画を作った事はないんだけども自分たちの会社の映画を作ろうと言い出した。僕の役の俳優はライン・ガスリンがいいね(会場、笑)ライン・ガスリンはいい腹筋してるから。映画を見てもう一つ真面目に感じたことは、サービスを開始して4ヶ月で3000ユーザーというコンシューマー向けプロダクトは全然良く無いってことだった。
     
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    Facebookが2週間でハーバード大学の学生の95%を突破したとかインスタグラムが200万人を突破したりしたとかという記事を読んでから僕が会社を始めて一番驚いたのは、価値のあるものを作るには時間がけっこうかかるということだ。
     
    2010年3月にPinterestは3000ユーザーで、もし僕たちがPinterestのスタートを2009年の11月ではなく、2008年5月に会社を辞めて会社を始めておけばこんなに悪く無かったかもしれないけど。(会場、笑)
     
    多くの人が「スタートアップをやるのはマラソンを走るようなものだ」と言うけど、いくつかの類似点はあると思うけど違う点もあって、実際には全然別ものだと思ってる。僕が自分の経験から考えるには、スタートアップをやるのはライトがつかなくて、ガソリンが全然ない車でロードレースをするようなものだ。トレドに向かっていて、最終ゴールはマイアミで、ガソリンが尽きかけてガソリンを買わないと誰かがあなたの座席からあなたを蹴落とすような。不完全な情報しか持たない状態で毎日毎日選択しなければいけないようなファクトは私にとっては事前に学ぶ事が出来なかったことだし、実際にチャレンジすることで今日があると思ってる。
     
    ということで今日は僕たちがのこういうヘンテコなプロセスの中で学んだことを少し話そうと思ってます。
     

    動き出す前〜グーグルでCS

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    2008年、僕はGoogleで働いていた。Adsenseで、エンジニアではなくカスタマーサポートとしてユーザーからのフィードバックを受け付けてプロダクトに影響のありそうなフィードバックを返すような仕事だった。
     
    そこで働いていた理由は僕はワシントンD.C.からやってきたんだけどそこではコンサルタントとして働いていて、建築家や技術者やアーティストのようなモノを作る人なら誰でも尊敬していたにも関わらず僕はいつも自分が医師になるんだと思っていた。その理由の半分は両親がしつこく言ってきたからだし、もう半分は僕の2人の妹がしつこく言ってきたから。で、大学を卒業して医師にならないことを決めたんだけどそこで方向性を見失ってしまった。
     
    しかしそんなとき、医師になるかなと思っていた時でさえテクノロジーに本当に興味があって、それが本当にクールだと思っていたんだ。
     
    僕は友達と一緒にオンライン上でメガネを試着出来るプログラムを開発した。両親は眼科医になってほしがっていたので、その代わりみたいなものだね。
     
    僕がコンサルタントの仕事をワシントンD.C.でしていたときに僕の友人オー・タイが僕に彼のYCombinatorスタートアップでミュージシャンやバンドの市場の問題を解決する会社を手伝ってくれるように依頼してきた時があった。またカリフォルニアに移動してグーグルで働いていた時ですら、別のウェブサイト、クイズサイトにとりかかってた。そのサイトではユーザーが自分の好きなクイズを遊べるサイトだった。これらの話に共通するテーマは、いずれの理由にせよプロダクトを作るのが本当にエキサイティングだということ。
     
    でも、いつもプロジェクトが暗礁に乗り上げてしまっていたんだ。僕はいつも何故途中で止まってしまうのかについて言い訳を持っていて、マーケットが正しく無かったとかもっとグーグルで学ばなければならないとかタイミングが悪かったとか。でも実際の結果に対して依存関係がある変数は、僕自身だった。依存変数は僕が一度もそのプロジェクトにコミットしないで、その仕事をしなければいけないという状況に自分の身をおかなかったことだった。
     
    自分のことを振り返ってみると、僕は他人がサイドビジネスで何か大きなものを作ってから本業にしてうまくいった話を気にし過ぎだったと思う。
     
    少なくとも僕にとっては、まず会社を辞めてコミットすることでやるしかないという状況にすることが重要だったと分かった。

     

    まずコミットしよう〜当時の彼女に突っ込まれて

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    もしかしたらサイドビジネスとしてうまく作ってから本業に移した話をたくさん聞いていたら驚く人もいるかもしれないが、少なくとも僕にとっては、個人的には心臓をその仕事に差し出すことがとても重要なことだ。
    実際にその考えに至った夜の事を思い出す。
     
    僕は当時のガールフレンド、今は奥さんだけど、にいくつかのイケてるアイデアについて話していた。そのアイデアがいかに素晴らしいか、どう作るか、どうマーケティングするか。すると彼女はちょっと意地悪な感じでこう言ったんだ。
     
    「あのさ、それを実際にやるか話すのをやめるかどっちかにしたら?」
    (会場、笑)
     
    それはちょっとイタかったけど、それを言ってくれたのが彼女だったのは一番良かったし、彼女は正しかった。僕は純粋に感謝していて、僕の人生のことを考えてくれて、僕とのデートで「実現するか、実現しないかどっちかにしなさい」と言ってくれたんだ。ただのデートより幸せだったね。そのアドバイスをくれて、本当に感謝している。
     
    そこで2008年に仕事を辞めて、ポールを仲間に誘った。彼は大学からの友人で、超リーダーシップのある人間だ。
    そして僕たちは一番興味があるマーケットはどこかと考えた結果それはモバイルだという結論に至った。
    iPhoneが登場してプラットフォームも登場してみんな本当に興奮していた。
    僕たちが作りたかったプロダクトはトゥという名前のスマホ上のショッピングカタログだった。
    なぜそれがクールだと思ったかといえば家に送られてドアの前に積まれたショッピングカタログの代わりに新しいcoolな携帯上でやりたかったし、なによりこの携帯の上で何かを表示したかった。
     
    そこでぼくたちは仕事にかかりプロトタイピングを始めた。でも、いくつかの問題が浮上した。
     
    1つ目は、そのころは作ったものがAppleに承認されるにはすごく時間がかかるということだった。どんなプロダクトが承認されるか何が誰にも分からなかった。
     
    2つめは未解決な問題がたくさんあったということだ。素晴らしいアイデアがいくつもあって、オフラインでキャッシュを用意して地下鉄でも見れるようにしよう、とか商品の支払いに進めるようにしよう、とかそんなアイデアを全てプロトタイプに入れようとした。
     
    ご想像のとおり、早かれ遅かれ僕たちは資金調達をしないとヤバいという状況になってしまった。
     

    資金調達を体験して学んだ事

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    時は2008年。創業者二人とも技術者でなく、資金調達環境は良く無かった。投資家がノーという理由はいくらでもあり、僕はマジでその全てを聞いたと思う。
     
    ノーの理由で1番多かったのは「数ヶ月後に連絡してくれ」というもので、これはいちばんイタい。
    これは例えば誰かをデートに誘った時に「うーん、今はちょっと。。。えーとたぶん、おそらく11月とか?」といわれるのに等しい。
    これを聞くのは本当にイタい。なぜなら数ヶ月後にはもっとお金が無くなっていて、さらにネゴのレバレッジが弱くなっているからだ。
     
    ノーの理由で2番目に多かったのは「ほかに誰が投資するの?」というものだった。
    これも本当に良く聞くもので、「私一人だけだったらちょっと難しいけど、他に投資する人がいたら僕も乗るよ!」というものだ。その人がいないから相談しているんだけど!こんなことありえない。おかしい。狂ってる。
     
    僕がとても鮮明に覚えているのはシリコンバレーの投資家グループ全体にピッチを出来るセッションに出た事だ。それはとてもビビっちゃうことで凄い会社を作った人たちがみんな見に来てるんだ。
     
    あと5分で僕の出番になるという時になって、みんな出口に向かって歩き出してしまったんだ。「何?!僕なにか悪いことした???」と思ったよ。で、その時に見つけたんだ。無料のクッキーが置いてあるトレイが後ろの方においてあるのを。(会場、笑)
    この話は彼らを席に止めるためにはクッキーが売り切れだよ、ということが必要と言う事だね。
     
    皆さんご存知の通り僕たちは何回か資金調達をしたんだけど、何回かは少し簡単だったけど何回かはホント大変だった。僕たちは西海岸中を飛び回って知っている投資家全員、テック系投資家もそうでない投資家も含めて連絡をとりまくった。僕たちは一定の金額を調達出来て、そして3つのレッスンを学んだ。資金調達を行う必要のあるプロダクトアイデアがある起業家は全ての人が知っておくべきものだと思う。
     

    資金調達で学んだこと①投資家も同じ人間

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    1つ目のレッスンは、お金持ちですら、「タダでクッキーをさしあげます」に興味があるということだ。あなたがもしお金持ちになっても「タダ」の魅力には影響されてしまうだろう。
     
    それはとても重要なレッスンで、つまり投資家も1人の人間だということだ。投資家というのは他人のお金と自分のお金を誰かに投資する仕事をしているけど、普通の人間なんだ。そして、どれだけ良い意見を持っている投資家だったとしても、もしかしたら間違っているかもしれないってことだ。これはとてもとても重要なことだけど僕は彼らの事を上に見過ぎていて全く理解することが出来ていなかったことなんだ。
     

    資金調達で学んだこと②投資家との交渉におけるレバレッジ

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    2つ目のレッスンは、あなたが本当にお金が必要で、彼らがお金を持っていて、そして彼らがお金をくれる唯一の相手だとしたら、あなたはまったくレバレッジをかけられる方法を持っていない、つまりレバレッジゼロということだ。その場合とてもタフな状況になってしまう。交渉することは全く出来ない。
     
    2008年はヒドい年で誰も「投資する」という言葉を吐くことに慣れていなかったし、それを投資家は知っていた。その時あなたが出来ることは何一つない、そのシステムをハックすること以外は。少しでも交渉のテーブルを動かすためには、あなたがレバレッジを持てるだけの理由が必要だ。あなたが知っておくべき一般的なカードは「案件を失う恐れ」と「このプロダクトがめちゃくちゃ大きくなるから、この投資を受けても受けなくてもとんでもなく成功するという信念」だ。
     
    2つめのカードについては僕たちは用意出来なかったので、1つめのカード(つまり「案件を失う恐れ」を使った。)
     

    資金調達で学んだこと③信じるべきたった一つのこと

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    学んだ事の最後は、一番重要なことだ。彼ら投資家はあなたにいろんなアドバイスをするんだけど、あなたがそのアドバイスを簡単に聞いてしまうと思う。なぜなら彼らのオフィスにあなたが足を踏み入れればそこにはグーグルの初期株券の証明書だったり、「Yahooを作った」って言われたり、彼らは超超超頭良い。
     
    でもベンチャー・キャピタルの投資リターンを見てみるとかなりブレがあって不安定なんだ。とてもボラリティが高い産業だね。僕たちが自分自身に言い聞かせなければいけないし、僕が本当に本当に信じている一つのことは、「未来はまだ白紙だ」とか「神のみぞ知る」ってことだ。基本的に未来は誰にも分からないってことだ。
     
    彼ら投資家は「キミはもっとテクニカルに強くなるべきだ」とか「キミは間違ったマーケットを攻めている」とかそんなことを何でも言える。もちろんいくつかは当たっているから自分で評価してみたらいい。でも、そのまま鵜呑みにはしてはいけない。
    なぜなら、彼らも間違うかもしれないからだ。
     
    あなたが頭の後ろで覚えておかなければいけないことがある。ベンチャーキャピタルや投資家が産み出したお金やオフィスに飾ってある証明書やIPO時のトロフィーは、すべて過去のものだということだ。そして、それらのために死んでしまったものたち(スタートアップ)があるってことだ。それらは自分自身を炎で焼いてしまったものたちであり、夜に幽霊として出てくるものたちである。
     
    僕は、もしあなたが誰かを「こいつは成功するかもしれない」と確信できるように説得出来たとしたら、あなたは成功出来ると思う。そして僕はこの姿勢が一般的に常にとても重要だと思う。採用の時だろうが資金調達の時だろうが、プロダクトの最終ブラッシュアップの時だろうがいつでもそう思う。
     

    たった1点でいいから秀でたものを作る。

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    最終的にお金を手に入れることが出来た僕たちは再び働き始め、そしてこの同じ基本的な問題を繰り返さないように改善スピードを上げ、東海岸での資金調達もスタートしたんだけど、その時にとても良いやつに出会った。エヴァン・シャープっていう名前なんだけど、その時彼はコロンビア大学を卒業したところで建築を学んでいたんだけどとても話が会った。エヴァンは全てのジレンマに気がついていて、僕たちがクールだと思うプロダクトとは何なのか、僕たちが本当に見たかったのは何なのかを考えたんだ。
     
    世に出た自分たちのプロダクトであり、誰かがそれを使っていて、それについて聞いてみると「私はこんなプランを持っていて、こんなことに幸せを感じるんだけど、Pinterestを使ったら〇〇に行きたくなったり、会った事の無い〇〇さんに会いたくなったんだ!」と言われるような、つまり僕が作った何かを誰かが使って役立つって思ってくれること、それが僕にとって一番興奮することだってことだったんだ。
     
    で、僕たちはあるアイデアで開発キャンプをした。ウェブベースの超シンプルで自分が使いたいと思うようなもの。ピンタレストとはそういうものだった。iPhoneアプリのアイデアの時に経験したレッスンは、もしその時に持っていたアイデアを全て機能的に詰め込めたとしても、ただ1つも素晴らしいと言えるものが無かったということだった。特別なものが何も無かったんだ。
     
    人々はMinimal Viable Product(MVP)について多く語ったり、いつローンチするのかという話をするけれど、僕からのアドバイスは「たった一つでいいから誇れるものをもってローンチしろ」ということだ。
    誰かが時間を使う価値があるたった1つのものだ。長い時間であれ少ない時間であれ誰かが使ってくれなければ、そうでないフィードバックであっても良いフィードバックを得るは出来ない。
    それが「プロダクトが良い」というフィードバックであってもそうでなくても ー 例えば彼らがプロダクトを見て「ゴミだね」と言ってくれたら、「フィードバックありがとうございます」と言って次に進むだけだ。
     
    コレクションサイトを僕たちが作るにあたって「すばらしいもの」として選んだのは「見た目が超イケテル!」ということだった。もしコレクションなのにクールに見えなかったら誰もコレクションを友達に見せたくないだろ?ぜんぜん不完全な感じに見えてしまうから。これが最初のバージョンのピンタレストだよ。見た目が全然いけてないよね。
     

    試行錯誤を繰り返して友達全員にメールした結果!

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    2009年11月、僕たちはベースとなるシステムを作って、どんな見た目に出来るだろうか、どうやったら面白そうな見た目になるだろうか、と試行錯誤を繰り返した。僕たちは多くのバージョンを試した。縦グリッド、横グリッド、両方、左ナビゲーション、右ナビゲーション、トップナビゲーション、違うロゴ。
     
    でも、僕たちはこれだ、というものに出会わなかったし、超クールだとも思わなかった。ちょっとずつ改善を重ねて、やっとローンチの準備ができて友達全員にメールして家族にも電話して「ぜひこのプロダクト触ってよ!超頑張ったんだ!」と連絡しまくった。で、基本的に誰も返信くれなかった。(会場、笑)
     

    たった1人、これが欲しい!と思う人(自分)がいるならば

    3人で知り合い全員に4ヶ月毎日連絡して獲得した会員3000ユーザーが全くアクティブじゃないのはとても悪い状況だ。でもとてもポジティブだったのは、使ってくれた人はほとんどいなかったんだけど、僕自身がこのプロダクトのことをとても気に入っていたことだった。
    そこですぐにプロダクトを変更するのではなく、僕みたいな人をなんとか探せるんじゃないかと考えたんだ。そして、この考えは僕たちがエンジニアリソースが無いという戦略とも合致していたのでマーケティングを頑張ることにした。僕たちがやっていたのは「Meet-up」というやり方で、最初はサンフランシスコの「ウェアデバイス」と呼ばれる店でmeetupして、違う写真を撮れるようその次は「ウェストマス」という店で行った。
     
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    その後ウェブ上でもマーケティングを行った。
    僕たちはビクトリアという素晴らしい女性ブロガーとキャンペーンを行い、そのキャンペーンは「Pin It Forward」というものだった。だれでも「Pin Board」というホーム画面のようなものを作ることができ、チェーンレターのようにある人から次の人へと組織的に招待状を送って行く仕組みで、全員が招待者として招待状に名前が載るものだった。
     
    これがうまくいったのは僕たちが「同じものを面白いと思うグループを見つけることが出来たから」だった。僕たちは彼らにPinterestが彼らの手助けをする事が出来ると説明したが、この一連の流れこそががPinterestだった。自分と同じ興味の人を見つけること。それが自分のもともとの友達であったりそうでなかったりするわけだ。僕たちが一般的なSNSの戦略に関して読んで来たどの戦略とも別の戦略が必要だった。
     
    それは本当に本当に興奮した瞬間だった。そして、みんなにとって一番興奮した瞬間は全てが成長しはじめた時だった。
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    私たちが最初にMeetup方式でマーケティングをしていたとき僕たちのサイトには本当に少数のユーザーしかいなかったけれど会った事のないユーザーがリアルな会話をサイト上で行っていたんだ。嘘っぽい会話ではなく、彼らの人生でどんなことがおこったのか聞いていたんだ。
     
    TwitterでFollowしたりFacebookグループで会話しているだけだったら知ることがないであろうことだ。例えば「家のガーデニングはうまくいってる?」とか「新しいリビングルームはどう?」とかすべてリアルな会話だ。
    でもこれが「Pinterestが特別であること」の核心のようにも感じる。とあるオンラインのサービスを使おうと思ったら、それがどんなものか理解することが出来る。もしオンラインでなく物理的な空間で同じ人と出会っても本物の関係を築くことが出来るかもしれない。
     
    シリコンバレーにいる大多数の人はまだPinterestについて前にはぜんぜん分かってなかったし、今でもけっこう理解してくれた人でも「ビジュアルがいけてて〜」という感じで、リアルタイムにオーガナイズされるわけでもないし、大きなテーマが後ろにあって、フィード機能もないし、彼らにはなんでPinterestを使う人がいるのか全然ピンときていない。でも僕にとっては、ちゃんと誰かにピンときていて、彼らが使ってくれているという事実があればそれが重要なんだ。
     

    みんな同じ記事読んで同じこと考えてる!

    さて、また投資家の話にもどる。みんなTechPress読んでるよね。投資家も誰もが読んでるのと同じハッカーニュースの記事を読んでる。それには彼らが投資したいような秘密で特別なハッカーニュースなんてないんだけど。(会場、笑)
     
    投資家たちは同じテッククランチの記事を読んで同じデータを見ている。とっても民主主義的だよね、投資家たちがアクセスした全ての情報にみんなアクセス出来るんだから。その事実は同時にこういうことも示しているんだ:他のふつうの人と同じように投資家も同じバイアスやトレンドやバブルの影響下にあるということだ、一般大衆紙のように。
     
    そんな時に僕たちは「投資家が会いたいと思う人」と対極な会社だった。(彼らにとって)Twitter、FriendFeed、Facebookは本当にホットな会社だ。彼らはリアルタイムだからね。グーグルの検索に引っかかるためには全ての情報がテキストになっている必要がある。そんな時に僕たちは「リアルタイムじゃないし、全部ビジュアルでテキストはないんだ」と言って現れた。「リアルタイム」と「テキスト」で2×2のマトリックスにしてみたら、Pinterestは「大失敗」の枠に入ってしまう。最悪のパターンだよね。
     
    結局どうしたかというと、僕たちは投資家にリアルなユーザーに会ってもらった。彼らの妻だったり、彼らの人生で会った事がある人だったり。それは彼らの考えを崩すのにかなり役に立った。
     

    今のPinterest

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    今僕たちはサンフランシスコにいる。パロアルトから出て少し悲しい、パロアルトが好きだったから。そして僕たちはチームを作った。ダイバーシティにとんだチームだ。
     
    ローンチ時にサービスを産み出す仮定で学んだのはエンジニアリングの問題ではなくコミュニティの問題だったこと。最初にクールなプロダクトを作ろうとしたときの問題は他のどの問題でもなくデザインの問題だったこと。この問題たちが僕たちのビジネスの成功に必要不可欠なものだった。
     
    僕がグーグルを出て行ったときは「僕が成功するにはスタンフォード出身の一番優秀な卒業生でPageRankをまだ知らないやつを捕まえて部屋に何でもかんでも詰め込んで素晴らしいものを作るしかない」と考えていた。僕たちが自分の会社をコーブLabにしたのは、イケてる会社はみんな自分の会社のことを「Lab」と呼んでいたからなんだ。(会場、笑)
    僕たちは「やべー、会社の名前Labにしなかったら誰も就職しに来ないぜ!」なんて言ってた。だって「Lab」って超Coolだからね。
     
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    でも僕たちが知って満足したことは、そんなやり方以外にも成功の方法はたくさんあるってことだった。資金調達しない会社もあればする会社もあったり、B2Bの会社もあればコンシューマ向けの会社もある。それには簡単な理由があって、違う人がたくさんいるからなんだ。
     
    世の中にはあなたにたくさん詳細なスタートアップの運営の仕方、詳細な戦略をアドバイスをしてくれる人がいる。僕はあなたはデータを信じる必要があると思うし、あなたのサービスを使っているユーザーを信じる必要があると思う。そして、何が自分の会社にとって正しいかの選択に自分自身の直感を信じる必要があると思う。
     
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    Pinterestは今のところ人々がインスピレーションを得ることを助けるツールになっている。もしかしたらちょっと大げさに聞いてしまう人もいるかもしれないが、僕たちが将来提供したいことは、家の模様替えの時でも旅行に行く時でもギフトを買う時でもそのプロセスの中で他人をインスパイアすることがクールなアクティビティになるってことなんだ。最初のローンチでそうなると思ったけれどある所に落ち着くものだ。時にプロダクトは目的を見つけて別の道に行ってしまうけれど、誰かが本当に好きでいてくれるものであればそれはOKだと思う。
     
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    Pinterestはネットワークだ。数億人のユーザーがいて数十億のオブジェクトが存在する。インターネットトラフィックのリファラーのうち3番目を占めている。最初のころは「テクニカルなスタートアップになる必要はない」と言われたけど、今のPinterestはそうならなければいけない。突然僕たちはデータマイニングに集中しユーザーがどうすることに興味があるかを調べなければならない。
     
    140105-0022
    ロードレースでミッドウエストを目指していたけど、向かうべき方向が変わったということが根本なんだと思う。そして、Pinterestは人々がそういう風に方向を変えることを助けるためのツールなんだ。旅行先を探したり、料理のレシピを探したり、休みの日のショッピング場所を探したり、人生でその全てのことが出来るんだ。
     
    140105-0023
    最後に、僕にとってPinterestはタレントが集まったチームだと思う。僕は毎日オフィスに行って僕より何をやっても圧倒的に出来る人たちと働いて純粋に幸せなんだ。起業家1人でやってるスタートアップもあるのは僕も知ってるけど、世界でトップのものはグループのチームによって作られている。
     
    あなたがスタートアップの初期で会社の株式について「この人に株をあげたら僕の分がなくなっちゃう、どうしよう!」と思っていると思うけど、考えるべきなのはパイ全体だ。パイをどれくらい大きくできるかだ。どれくらいの人間が自分のサイズより大きいパイを作れますか?(いや、作れない)ってことなんだ。
     
    もしあなたと一緒に働きたいと言う人でその人そのものよりも大きな結果が欲しい人がいたら、それはきみにとって一番の投資だ。彼らにあなたが作ろうとしているもののオーナーシップをあげよう。僕にとって心地よい体験だったのは、実際にPinterestで働く人みんなが会社の運命の一部に責任を持っていたということだった。この話はオフィスの中の話で、会社を設立したてのときはコラボレーションをしていたけどね。
     

    まとめ

    もし僕がアドバイスを2つだけしろと言われたらそれはとてもとてもシンプルなものだ。
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    1つめは、自分自身が信じるものをつくれってことだ。5年、10年、15年とやっていくものだったら最低限自分が本当に好きなものじゃなかったら燃え尽きる。もしあなたが禁欲的な人間でも15年すべてのリスクを自分でとってやる時にアイデアへの愛がなかったら辞めてしまう。
     
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    2つめはギブアップするなってことだ。あなたの夢を誰かに言い負かされて廃案にしたりするな。
     
    僕がスタートアップスクールを超クールだと思う理由は、周りにいる人間がみんな自分のやりたいことをやっているということだ。シリコンバレーはちょっとおかしな場所で、人々はみんなスタートアップの話をしている。世界中の他の国に住んでいる人で初期のスタートアップの人はとても孤独だ。とても苦しい。苦労して登っても誰も興味もない。どこにもたどり着けない。
    自分でスタートアップしようとする人はとりあえずハードワークする傾向が強いと思う。ものをなくしてスクリーンに体を出来るだけ近づけて。(会場、笑)僕はそのゲームの仕方はとても危険だと思う。
     
    僕がこのプレゼンの最初に働いていない友達のことを見せたけど、彼とは良く出かけて「今超苦しい時期だなー」などと話していたけどそれはだいぶ気を楽にしてくれた。どこに住んでいてもあなたはそういった人を捜す事が出来る。隣人だったりオンラインだったり。ミートアップすることは難しいかもしれないけど誰かは見つけられる。僕はこういった人たちに時間を投資することはいいアドバイスだと思っている。
     
    さて、今日僕がココに来たのは僕にとっては部屋いっぱいの「自分でやりたいことをやっている」人たちに囲まれた場に来てホントに興奮することだし、僕は自分より大きなものを作りたいと思っている人間だからロードレースを走っている人にとって何か有用なものがあれば良いと思っているし、皆を見ていたら僕は幸せになるし、僕たちがやっていることにも興奮するからです。
    (おわり)
     
     

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    一日も早く起業したい人が「やっておくべきこと・知っておくべきこと」 (アスカビジネス)

     

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